利益と法人税5/11

社長の給与には税務署の物言いがつく?

 

築山公認会計士事務所

 

目次

 

 

≪役員などに対する給与≫

 

ご存知のとおり役員の給与に関しては、様々な法人税法におけるルールが存在します。

「みんな一生懸命働いているので給料を渡している。なのに、あれもこれも費用(損金)にならない」と

叫びたくなるかもしれません。

法人税法に限らず、あらゆる税法の目的の一つが「課税の公平性」です。

給与の支払い方法(とんち?屁理屈?)次第で、

あまりにも法人税が安くなると感じたときは「要注意」とお考えください。必ず、落し穴が待っています。

 

会社が、役員(登記されている取締役や監査役)、使用人(従業員、パート、アルバイトなど会社に雇用される者)、その他の者(相談役、顧問など)に、その「職務の対価」を支払うことは当然であり、それが企業会計上の費用、法人税法上の損金になることはなんら異論がありません。しかし、法人税法では、役員をはじめ会社と特別な関係にある者については、その職務の対価の支払いについて様々なルールを設けています(損金の額に算入されない部分がある)。これは、役員など経営の実権を握る者(利益操作を自由にできる者)が法人税の負担を逃れるために、自身やその近親者への職務の対価の支払いを不当に増やす(損金の額を増やす)ことを防止するのが狙いです。

 

役員の給与についての法人税法のルールの概略は次のとおりです。

 

●役員を法律上(登記されている)の役員に限定していない

●役員の給与のうち不相当に高額な部分は損金不算入とする

●不定期に支給する給与=ボーナス(退職給与は除く)は事前に届けた部分しか損金の額に算入できない(使用人兼務役員の使用人部分と上場企業の業務執行社員に支給する利益連動給与は除く)

●駄目押しするかのように役員に対する「金銭以外の給与(役員の私的出費の会社負担など)」や「役員の近親者への給与」の損金算入を制限している

●当然のこととして事実隠蔽(上記の事実を隠す)や仮装経理(上記の事実を曲げる)による給与の額は損金の額に算入できない

 

 

1 役員とは

 

法人税法における役員とは、次のとおり役員として登記されている者よりも広い範囲となっています。

 

(1)役員として登記されている者(法律上の役員)

●取締役、執行役、監査役など

 

(2)役員として登記はされていないが(法律上の役員ではないが)「会社の経営」に従事している者

●使用人以外の者でその会社の経営に従事している者

いわゆる「相談役」や「顧問」と呼ばれる者がこれに該当します。

●同族会社の使用人のうち所有割合が一定率(注)以上でその会社の経営に従事している者

いわゆる「大株主(一族)」は、形式上は使用人でありながらも経営に従事することもできるので役員とされます。

(注)同族会社判定の基礎となった、所有割合が50%を超えるときの上位3グループのいずれかに属し、そのグループの所有割合が10%を超え、自身の所有割合が5%を超えていること。

 

(3)使用人兼務役員

法人税法では、次の要件を満たす者については使用人兼務役員とし、その者に支給する給与については、役員部分と使用人部分に区分けして取り扱うとしています。

(イ)部長、課長その他会社の「使用人としての職制上の地位」にあること

(ロ)「常時使用人として」の職務に従事していること

なお、実情はどうであれ、以下の者は使用人兼務役員となることはできません。

●社長、代表取締役、代表執行役、副社長、専務、常務など明らかに会社経営の中枢にある者

●合名会社、合資会社および合同会社の業務執行社員

●監査役(会社法上、監査役は監査業務に専念しなければなりません)

●同族会社の役員のうち一定の同族判定株主グループに属し所有割合が一定率以上の者(この所有割合は上記(2)役員として登記はされていないが「会社の経営」に従事している者と同じです)

 

《会長、社長、専務》

これらは俗称に過ぎません。しかし、これらの者は登記上役員とされているか、そうでなくとも経営に従事していることが通常ですので、ほとんどの場合は法人税法上の役員となります。

 

《経営?》

法人税法において明確な定義はありませんが、会社の重大事項(人、物、金の重大な変動)の決定をすること(する立場にあること)と考えられます。

 

《使用人》

法人税法上の役員以外の者ということですが、使用人としての「肩書(部長、課長、工場長、支店長、営業所長など)」や「職務」がなければなりません。

 

2 役員給与

 

「役員給与」とは、役員の給与のうちあらかじめ支給時期、金額やその計算方法が定められている(支給時期や金額を利益操作目的のために恣意的に決定できない)下記のものをいい、該当する場合には損金の額に算入することができます(該当しないものは損金に算入できない)。

 

(1)定期同額給与(従来、「役員報酬」と呼ばれていたものとほぼ同じ)

支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとで、事業年度の各支給時期における支給額が同じである給与をいいます。これは、一般的に「役員報酬」(役員の月給)と呼ばれるもので、平成18年の法人税法改正前までは定期同額給与とほぼ同じ意味のものが法人税法上も役員報酬と呼ばれていました。

 

(2)事前確定届出給与(従来、「役員賞与」と呼ばれていたものとは異なります)

所定の時期に確定額(あらかじめ確定した金額)を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、株主総会などの決議の日(あるいは役員としての職務を開始する日)から1ヶ月以内、あるいは事業年度開始から4ヶ月を経過する日のいずれか早い日までに税務署に所定の届けをした給与をいいます。

 

(3)利益連動給与(上場企業に限られます)

要するに、サラリーマン役員の給与のことです。一握りの上場企業に限られますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 

《定期同額給与の決定時期と事業年度途中での変更》

役員の給与は事業年度終了後3ヶ月以内に開催される定時株主総会で決定されるので、新事業年度開始から3ヶ月以内(旧事業年度終了後3ヶ月以内)に決定されるということになります。つまり、同一の事業年度において毎月支給する定期同額給与の額が決定の前後で異なってもよいということです。

定期同額給与を定時株主総会以外のときに増額することはできません。定期同額給与は「事業年度の各支給時期における支給額が同額である」必要があるからです。例外的に増額が認められるのは、職務内容が大幅に変わった場合(非常勤から常勤になったなど)だけです。一方、業績不振による減額は比較的容易に認められます。

 

《役員賞与=役員のボーナスが損金算入できる!?》

上記の(1)と(2)からそんなに甘くはないことをご理解いただけると思います。(以前は役員のボーナスは一切損金算入できませんでしたが、現行法でも上記のような条件付きで認めているに過ぎません。)

 

《過大な役員給与の損金不算入》

会社が支給した役員給与の額が「不相当に高額である」場合には、「その高額な部分」の金額は、損金の額に算入されません。これは、役員の職務の対価である役員給与が不相当に高額であればその部分には損金性がないということです。

役員給与の金額的な妥当性は大変重要なことですが、法人税法はこの基準について次のとおりの「大変抽象的な基準」と「大変形式的な基準」しか示していません。

(イ)実質基準(抽象的な基準)

その役員の「職務の内容」「その会社の収益の状況」「その会社の使用人に対する給料の支給状況」「その会社の同業・同規模の他社との比較」を総合的に勘案して「相当な額」を超える金額は損金不算入となる。

(ロ)形式基準(注)

「定款の規定」や「株主総会や社員総会など」で役員の給与の限度額を定めている場合には、その事業年度においてその役員に対して支給した金額がその限度額を超える場合には、その超える金額は損金不算入となる。

この基準は形式的ですが、会社法上は定款の規定や株主総会・社員総会の決議を基に役員給与の金額が決定されることからすれば、これを超える金額が役員給与ではないのは当然です。

損金不算入となる「不相当に高額な部分」とは、(イ)を超える金額と(ロ)を超える金額のいずれか多い金額です。

「実際の役員給与>実質基準>形式基準(形式基準が限度)」、「実際の役員給与>形式基準>実質基準(実質基準が限度)」は当然として、「形式基準>実際の役員給与>実質基準(実質基準が限度)」、「実質基準>実際の役員給与>形式基準(形式基準が限度)」、いずれの場合にも過大な役員給与の問題となります。つまり、「形式さえ整えていれば(定款や総会の議事録を残しておけば)」、「あくまでも実質(定款や議事録の役員給与の額が低いのを忘れていた)」のいずれもアウトということです。(後者にはならないようにしてください。)

(注)定款の規定や株主総会などの決議がない場合には(形式基準が適用できない場合には)、(イ)の実質基準のみで判定します。

 

役員給与をいくらにするか(経営上、税務上、役員の生活の必要上)、多くの会社が悩む問題です。役員の範囲と役員給与を決定する手順(定款の規定や株主総会・社員総会決議)についての正確な認識、その職務の明確な把握(組織図などによる明確な職務分掌)、同業・同規模他社の状況の調査(そう簡単には知ることはできないでしょうが)でもって税務調査に臨むしかありません。

 

3 役員の賞与(ボーナス)

 

役員の賞与(ボーナス)は、上記2役員給与(2)事前確定届出給与と(3)利益連動給与(上場企業に限られます)を除いて損金の額に算入できません。

 

《役員報酬の年払い》

非常勤役員など、比較的給与の額が少ない役員に対しては、毎年一定の時期に給与を支給する(12か月分を一括して支給する)ほうが事務手数も省けます。そんなことから、定期の給与を受けていない役員(いわゆる顧問や相談役など)に対してはこのような支給方法でも役員給与として損金算入することができます。ただし、事前確定届出給与として扱われますので税務署に事前に届けが必要です。

 

4 役員の退職給与

 

(1)役員の退職給与とは

役員の「退職を基因」として支給される一切の給与をいいます。

 

(2)過大な役員の退職給与の損金不算入

退職した役員に支給する退職給与は、その額が不相当に高額であるときは、その不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入することができません。このルールの趣旨が、上記の定期同額給与などのルールと同様であることはいうまでもありません。なお、その金額が妥当であるかの判断は「その役員の在職年数」「その役員が退職する事情」「その会社の同業他社状況」などにより判定します。

 

《役員の退職給与の性格》

役員の退職給与の性格は、次の二つの要素からなります。

●過去の勤務に対する対価の後払い(給与と同様の性格)

●過去の功労の褒賞の支払い(給与と同様の性格)

 

《役員の退職給与の決定手続》

通常は株主総会(社員総会)の決議によりますが、役員退職金についての具体的な規程が存在する場合には取締役会の決議によることもできます。

 

《役員の退職給与の損金算入時期》

次のいずれかの日の属する事業年度となります。

●株主総会(社員総会)で具体的な金額が確定した日(未払計上もできる)

●支給した日

 

《役員の退職給与の分割払い》

株主総会(社員総会)で具体的な金額が確定した日の属する事業年度に損金算入されますので、分割払いの際には損金としての処理は発生しません(未払金を取り崩します)。ただし、あまりにも分割払いの回数が多い場合には、過大な退職給与とされるおそれがあります(会社に支払能力もないのに損金の額を増やすために計上した)。なお、退職給与を年金形式で支給する場合には、年金として支払った都度の損金算入となります。

 

《退職することの意味》

「名実とも退職」していない場合には損金算入が認められません。つまり、登記上は役員を退いているけれどもその後も会社の経営に関与している場合には退職したとはされません。

 

5 金銭以外で支給する役員への給与

 

役員の給与には、支給を受けた役員に対して所得税が課税されます(会社が源泉徴収し納付します)。そんなことから、多くの人は「何とか名目を代えて(給与以外の名目で)」と考えます。そこで行われるのが「経済的な利益の供与」=「実質的に給与を支給したのと同じ経済的効果があるもの」ですが、これらが行われた場合には役員に対する給与と扱われてしまいます。まったく、油断も隙もありません。

 

国税庁はこれらについて通達でその具体例を明らかにしています。なお、税務署は通達でその見解を公にしている事項に対しては、納税者側といわゆる「見解の相違」が生じたとしても毅然とした態度で臨んできます(一歩も引きません)。

「所得税が高いので」「事業を始める際の夢だった」「よそもやっている」「少しくらいはばれないだろう」は禁物です(到底税務署を説得できません)。

 

(1)役員に対して物品その他の資産の贈与をした場合におけるその資産の価額に相当する金額

(例)会社の自動車を役員が私用にのみ使う。

(2)役員に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合におけるその資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額

 (例)会社所有の不動産を時価よりも安く役員に譲渡する(役員は時価よりも安く譲受けたことにより利益を得る)。

(3)役員から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の価額と買入価額の差額に相当する金額

 (例)役員所有の不動産を時価よりも高く購入する(役員は時価よりも高く売却できたことにより通常の売却よりも利益を得る)。

(4)役員に対して有する債権を放棄しまたは免除した場合(貸倒れに該当する場合を除く。)におけるその放棄または免除した債権の額に相当する金額

 役員に対して支出した金銭ですので当然です(放棄あるいは免除により役員給与を受け取ったのと同様の結果となります)。

(5)役員から債務を無償で引き受けた場合におけるその引き受けた債務の額に相当する金額

 (例)役員の住宅ローンを会社が返済する(本来個人的に負担すべきものを会社に肩代わりしてもらったことになります)。

(6)役員に対してその居住の用に供する土地または家屋を無償または低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と実際徴収した賃貸料との差額に相当する金額

 ほかで賃借した場合(通常の賃料を支払った場合)よりも有利であるため、役員給与を受け取ったことになります。

(7)役員に対して金銭を無償または通常の利率よりも低い利率で貸付けた場合における通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際徴収した利息の額の差額に相当する金額

 上記(6)と同様です。

(8)役員に対して無償または低い価額で(6)および(7)に掲げる以外の用役の提供をした場合における通常その用役の対価として収入すべき金額と実際に収入した対価の額との差額に相当する金額

 上記(6)(7)と同様です。

(9)役員に対して機密費、接待費、交際費、旅費などの名義で支給したもののうち、その会社の業務のために使用したことが明らかでないもの

 役員に手渡した金銭を会社の業務と無関係のことに使った場合には役員給与となります。

(10)役員のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の額に相当する金額

役員に手渡した金銭を役員が個人的なことに使った場合には役員給与となります。

(11)役員が社交団体などの会員となるためまたは会員となっているために要するその社交団体の入会金、経常会費その他その社交団体の運営のために要する費用でその役員の負担すべきものを会社が負担した場合におけるその負担した費用の額に相当する金額

 上記(10)と同様です。

(12)会社が役員を被保険者および保険金受取人とする生命保険契約を締結してその保険料の額の全部または一部を負担した場合におけるその負担した保険料の額に相当する金額

 このような場合には、保険のメリットを役員個人やその親族が享受することになります。

 

《役員への給与としない経済的利益》

 通勤手当、作業服の現物支給などで所得税法上非課税とされているものについては、役員に対する給与以外の名目でも損金算入することができます。

 

6 使用人兼務役員の給与の取扱い

 

(1)定期の給与

使用人兼務役員の対する給与も役員給与であることから、上記2と同じ扱いになります。

しかし、会社が定款で定める給与の支給限度額に使用人兼務役員の「使用人としての職務に対する給与」を含めていない場合には、その会社の他の使用人の給与の支給状況などに照らしてその職務に対する給与として「相当と認められる金額」は、上記2(2)の役員給与の「形式基準」から除外することができます(役員給与ではなく使用人に対する給与として処理できます)。

 

(2)臨時の給与(賞与)

臨時の給与(賞与)のうち、使用人部分については上記の役員の給与についてのルールは適用されませんので、支給した金額を損金の額に算入することができます。しかし、その金額が他の使用人に対する給与の支給状況などに照らして相当な金額であり、さらに賞与の支給時期が他の使用人と同じであることを満たしていなければなりません。

 

7 特殊な関係にある使用人に対する給与

 

法人税法においては上記のとおり、役員の給与については大変細かなルールが存在しますが、使用人の給与については労働の対価としての給与は無条件に損金算入することができます。

しかし、使用人であっても役員と「特殊な関係にある使用人」については、その給与について下記のとおりいくつかの例外が設けられています。特殊な関係にある使用人とは「役員の親族」「役員と事実上婚姻関係と同様の関係にある者(この者と生計を一にする者を含む)」「役員から生計の支援を受けている者(この者と生計を一にする者を含む)」をいいます。

 

●過大な給与の損金不算入

●過大な退職給与の損金不算入

 

このルールが、役員本人に対する「過大な給与の損金不算入」「過大な退職給与の損金不算入」というルールの抜け穴を封じるものであることはいうまでもありません。

  

 

《役員の給与の実際》

 

「損金算入できない=帳簿に記入しない」ということ?

帳簿上は支払った金額を全額記入しますので、損益計算書においても費用となり利益の減少要素となります。損金不算入(法人税法による規制)となる部分は申告書において加算します。

 

役員の給与は誰が決めるのか

総額(全役員の給与合計)は株主総会などの会社の最高意思決定機関や会社の最高位のルールである定款で決定し(総額の決定は必ずこのいずれかの方式によらねばなりません)、各人への配分は取締役会で決定することが一般的です。しかし、多くの中小零細企業においては、株主総会など開催されておらず、定款も原始定款(会社設立時の定款)しか存在しません。つまり、暗黙の(改まって一同が集まらない)株主総会などが開催され、暗黙の(明文化されていない)定款によって役員の給与が決定されているということです。だだし、このような場合には明文化された役員の給与の決定根拠がありませんので、限度額の算定に当たっては「実質」によることになります。

 

役員の給与の金額変更

役員の職務からして頻繁に変更を行わないことは当然です。前述のとおり役員の給与が利益調整に用いられることから、頻繁な給与の変更に対して税務署は目を光らせています。役員の給与の変更については多くの会社が悩むことです。しかし、以下の点に留意していれば、税務署と大きな衝突をすることはないと思います。

●客観的に見て会社の規模が拡大(縮小)し役員の職務が増大(減少)した際に変更する

●突発的な業績の変動時には変更しない

●親族役員の評価を冷静に行う

●各役員の職務内容を説明できるようにしておく(組織図や業務記録の作成・保存)

●「形式さえ整えておけば」という安直な考えは抱かない

●税務署からの役員の給与についての質問から逃げない

 

名目上の役員への給与

一見、「過大な給与の問題」と考えられるかもしれませんが、この件は少し話が違ってくると思います。「誰が最終的な受取人であるか」「仮装(役員としての職務を行っているように見せかけること)による法人税の不当な減額」が税務署にとっての検討課題になります(徹底的に調査されます)。

 

役員の給与と源泉所得税の徴収

役員の給与が役員の給与所得であることから、従業員の給料同様に支払の際に源泉所得税の徴収が必要です。

 

役員の給与の未払い

業績不振時にも役員の給与を減額していない場合には、給与を支払えないこともあります。源泉所得税はその支払いの際に徴収するのですから、給与が未払いとなっている場合には源泉徴収の必要はありません。しかし、実務上は役員へ給与をいったん支払って、その後に役員から借り入れしているという処理をします(実質的には未払いである役員の給与についても源泉徴収しています)。

なお、このような状態があまりにも長期に続く場合には、役員の給与を減額しても当然税務署は問題としません。

 

平成18年の画期的大改正!?

その多くがサラリーマン社長である大手企業においては、役員の給与も従業員同様にあらかじめ決まっていることが実情です(定款や株主総会の決議という本人の自由な意思が及ばない方法で決まっている)。そんなことから、従来の「役員報酬と賞与」を「定期(損金算入)と臨時(損金算入できない)」という「支給時期による形式のみ」で区分けすることに対する批判がありました。

このような実情から上記のとおりの改正が行われ、「事前確定届出給与」「利益連動給与」という考えが導入されたわけです。しかし、「利益調整のために役員の給与を増減させることを封じる」ことが法人税法の大きな目的の一つであることは改正後も一切変わりはありません。

 

 

目次